エンジニアリング組織論への招待 Chapter1 - 読書メモ
エンジニアリング組織論への招待
目次
- Chapter1:思考のリファクタリング
- Chapter2:メンタリングの技術
- Chapter3:アジャイルなチームの原則
- Chapter4:学習する組織と不確実性マネジメント
- Chapter5:技術組織の力学とアーキテクチャ
書籍
Chapter1:思考のリファクタリング
- 思考のリファクタリング
- 頭の中で発生してしまう無駄なプロセスを削除して、考えるときの指針を持ち、問題解決に向かって明確に行動が出来るよう促すもの
- 「不確実性に向き合う」
不確実性とエンジニアリング
エンジニアリングとは
- 「曖昧さ」を減らし、「具体性・明確さ」を増やす
- 曖昧さ
- 決まっていないこと・将来どうなるかわからないこと =「不確実性」
- 曖昧さ
不確実性
- 組織構造と不確実性
- 不確実性の発生源
- 「わからないこと」から「不確実性」が発生する
情報を生み出す考え方
仕事の問題解決を行うために必要な3つ思考
- 論理的思考の盲点
- どんなときに人が論理的でなくなるかを知った上で問題解決を行う
- 経験主義と仮説思考
- 情報を得た上で問題解決を行う
- 得た情報から全体を想定し問題解決を行う
- システム思考
- 全体像を見極め問題解決を行う
仕事の問題を学力テストの問題に変換する
論理的思考の盲点
論理的思考には2つの前提が必要
- 2つの前提
- ルールと自称を正しく認知できること
- 正しく演繹できること
- 「人はどのようなときに非論理的になってしまうのかを知る」ことが重要
ベーコンのイドラ
- 「身体的機能」「自身の環境」「周囲の意見」「伝統や権威」によって錯覚や認識の間違いを起こしてしまう
認知の歪み
- ゼロイチ思考
- 白か黒か、敵か味方かのように、2分法で考えてしまう
- 一般化のしすぎ
- 1つや2つの事例で決めつけたり、早計な判断をしてしまう
- すべき思考
- 他人に対し「○○すべき」と期待し、強制してしまう
- 選択的注目
- 人は見たいものだけ見てしまう
- レッテル貼り
- ある人の特定の属性に注目して判断してしまう
- 結論の飛躍
- 相手の感情を先回りして読み取り、短絡的な判断をしてしまう
- 感情の理由付け
- 感情のみを根拠に自分の考えが正しいと判断してしまう
認知的不協和
- タバコが体に悪いと理解しているがタバコを吸う
- 知識と行動の整合性が取れていない状態
- 不整合を避けるため、正当化出来る情報を選択的に取り入れてしまう
- 「自分」や「自分が大切にしていること」に被害が及びそうだと感じる
- 恐怖を感じる
- 怒りに変わる
- 自分や大切にしていることを守るため、理屈を練り上げてしまう
- 怒りに変わる
- 恐怖を感じる
自分のアイデンティティの範囲を知る
- アイデンティティ=「自分を構成すると思っていること」
- 範囲が広い人
- 怒りを感じる範囲が広い
- 範囲が狭い人
- 怒りを感じる範囲が狭い
- 範囲が広い人
「怒り」を「悲しみ」として伝える
- 他人の大切にしていることを知ることはできない
- 「怒り」を感じたときは「○○は自分にとって大切で、○○な扱いをされると悲しい」など、「悲しみ」として伝え、相手に自分の大切にしていることを知ってもらう
問題解決より問題認知のほうが難しい
- 人は自分が間違っているかもしれないことを無意識に避けてしまう
- 正しい情報を認知できない
- 自分が間違っているかもしれないと思考のパターンを変える必要がある
経験主義と仮説思考
経験主義:わからないことは調べるしか無い
- 「理性主義」
- ある「前提」から演繹的に判断しようという考え(ウォータフォール)
- 「経験主義」
- 「経験」を行うことでしか「知識」を得られないという考え(スクラム)
- 「何がわかればわかるのか」を考え、それを「確かめる」
不確実性と夏休みの宿題
- 夏休みの宿題
- 計算ドリル
- 不確実性が「低い」
- いつ終わるのか大体わかる
- 自由研究
- 不確実性が「高い」
- いつ終わるのかわからない
- 計算ドリル
- 自由研究(不確実性の高いもの)から取り組むことで、いつぐらいに終わるのかわかる
- 不確実性が下がる
プロフェッショナルの仕事
- プロフェッショナル
- 短い時間で一定のクオリティまで上げて、残り時間で作り込む
- 不確実性の高いものから取り組む
- 短い時間で一定のクオリティまで上げて、残り時間で作り込む
- アマチュア
- 残り時間が短くなってから、急速に出来上がってくる
コントロールできるもの/できないもの
- 経験主義で重要なこと
- 「知識」=「経験」を行動によって手に入れるということ
- 「行動できることは何か?」
- 「行動の結果起きたことを観察できるか?」
- 「知識」=「経験」を行動によって手に入れるということ
- e.g. 「上司が自分の仕事を評価してくれない」
観測できるもの/できないもの
- 本来コントロールできないはずのものを、自分の行動で変化させようと試みるには
- 「観測できる」必要がある
- 「観測できない」ものは、行動しても変化がわからない
あなたができること
仮説思考:少ない情報で大胆に考える
演繹法 | 帰納法 | 仮説法 |
---|---|---|
ルール:人間は死ぬ | 事象:このカラスは黒い | 事象:2つの大陸は海岸線が似ている |
事象:Aさんは人間である | 事象:あのカラスも黒い | 仮説:大陸は移動してたのではないか |
結論:Aさんは死ぬ | 結論:全てのカラスは黒い | 結論:2つの大陸が1つである証拠を探そう |
データ駆動な意思決定の誤解
- 「データ駆動な意思決定」
- 「仮説」を推論するために、持っているデータの可視化をする
- 「仮説」が正しかったのか、統計的に検証する
「次に取るべき正しい行動」を出すためではない
リアルオプション戦略と遅延した意思決定
- リアルオプション戦略
- 仮説を作り、その仮説を早期に少ない予算で検証する
- 大きな意思決定を遅らせることが出来る
問題の解決よりも問題の明晰化のほうが難しい
- 社会で取り組む問題の多くは、情報が不完全な状態から始まる
- 問題解決よりも先に「どのような問題なのか」をはっきりさせることが重要
- 「経験主義」+「仮説思考」→「問題は何なのか」をはっきりさせる
- 「問題を解く」ことは難しいことではない
全体論とシステム思考
システムとは全体の関係性を捉えること
部分だけしか見えないことで対立が起こる
- 3次元のU
- 様々な対立が、物事を「側面から」見ることができずに発生する
バランスシートとP/Lの関係性
- 企業内部には、まだ資産や利益に還元されていない無形の投資活動が含まれている
- 全体のフィードバックサイクルで見ると、それらは「コスト」とは限らない
- P/Lだけ見ると「コストに見えてしまう」
拡張のフィードバックと抑制のフィードバック
- どの様なフィードバックサイクルが存在するのか見つけていくことが重要
全体の関係性が見えれば対立は解消する
- 1つ上の次元から問題を捉えて、システム全体を把握していく
- 対立から発展的な議論へと視野が拡大する
認知範囲とシステム思考
- 視野・視座・視点
- 問題解決のための眼
- 視野
- あるポイントからその問題を眺めたときに同時に把握できる領域の広さ
- 広い/狭いで評価
- 視座
- どこから眺めるか
- 高い/低いで評価
- 視点
- どの角度から眺めるか
- 鋭さ/凡庸さで捉える
- 視野
- 問題解決のための眼
- 個人ではなく関係性に注目する
- 様々な問題は、本当に個人の問題なのか?
- 個人同士の関係性が問題なのかもしれない
- 個人の性質
- 変えるのは難しい
- 個人同士の関係性
- 変えるのは難しくない
- ここに注目するのがシステム思考
- 個人の性質
- 個人同士の関係性が問題なのかもしれない
- 様々な問題は、本当に個人の問題なのか?
問題解決より問題発見のほうが難しい
- 世の中は複雑な相互関係を持っている
- 合理的に見える解決策が別の問題を引き起こしたり、想定していない悪化をもたらす可能性がある
- システム思考によって問題を変換する
- 対立に見える問題 → 対立にならない全体像をあぶり出す
- 個人の問題 → 関係性の問題
人間の不完全さを受け入れる
思考を前にすすめるための3つの考え方
- 論理的思考の盲点
- 「人は正しく事実を認知できない」
- いつ認知が歪むのかを知り、歪んだ認知を正すための行動を促す
- 経験主義・仮説思考
- 「いくら理屈で考えても答えが出ない問題に時間を浪費してしまう」
- 実験によって知識を獲得し、何が問題であるかを削り出すように考えるための行動を促す
- 全体論とシステム思考
- 「人は問題を個人の責任にしたり、全体像を見失った局所的な思考をしてしまう」
- それが全体像ではないかもしれない、問題は関係性にあるのでは、という視点と問題解決のための眼を提供し行動を促す
コミュニケーションの不確実性
- 人間のコミュニケーションの不確実性は3つの不確実性から来ている
- 他者理解の不確実性
- 人は他人や事象を完全には理解できない
- 伝達の不確実性
- コミュニケーションが到達するとは限らない
- 成果の不確実性
- 仮に理解されたとしても予想されたように行動するとは限らない
- 他者理解の不確実性
情報の非対称性
- 同じ目的を持った集団で、何かの情報を片方の人が知っていて、もう片方の人が知らないという状態
- 人は正確に自分の考えを他人に伝えることは不可能なので、非対称性が生まれる
限定合理性
- 人間の認知能力には限界があり、ある人にとっての正解が全体にとっての正解になるとは限らない
コミュニケーション能力と透明性
- 組織の人数が増えるにつれてスケールするはずが、徐々に悪化してしまう
- 「情報の非対称性」と「限定合理性」が存在するから
- コミュニケーション能力
- コミュニケーション能力とは、コミュニケーションの不確実性を減少させる能力
- 透明性
- 透明性とは、継続したコミュニケーションや仕組みを通じてコミュニケーションの不確実性を低く維持し、情報の非対称性が削減され限定合理性の働きを弱められている状態
不確実性を削減し秩序を作る
- 「不確実性を削減し、秩序を作る」ことこそがエンジニアリングで最も重要な出発点・性質である